まぁまぁ、焦らずに。

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ぼくが「バトル・ロワイヤル」を一番の映画に選ぶ理由

※この記事はネタバレを含みます。みてない人はご注意を。

 

2000年の公開当初、国会でも話題にあがったほど社会的問題作として注目を浴びた映画「バトル・ロワイヤル」。今までみた映画のなかで、これがダントツの1位なのだけど、これを人に伝えると「え?なんで?」と聞かれる。

 

理由は、これほどまでに人間を生々しく描いた映画はないから。決してバイオレンスに惹かれたからとかそういう理由ではない。

 

はちゃめちゃな法案「BR法」

舞台は、失業者がありえないほどでてしまっている、経済危機の日本。「もう大人は頼れない」と子供が学校で暴れたり、家庭が崩壊したりしてしまっている。大人は焦っている。子供にまいっている。

 

そこで、政府は新しい教育法を考える。年に一度、全国の中学3年生の中から1つのクラスを選び、無人島で1人になるまで殺しあってもらう、はちゃめちゃな「BR法」というもの。

 

映画では、不運にも選ばれた42人の生徒が、修学旅行の帰りのバスで催眠ガスで眠らされ、目が覚めると地下の部屋に連れていかれる。

 

「え?なに!?どうなってんの!?」と生徒がパニックするなか、先生(北野武)が現れ、「これからみんなに、殺し合いをしてもらいまーす」と一言。

 

ここから、生徒は各自武器(アタリなら銃、ハズレならフライパンとか)を与えられ、1人無人島へ。バトル・ロワイヤルがスタートする。

 

自分の命と友達の命、どっちをとるか

自分が生き残るには、友達を殺すしかない。考えてみてほしい。

 

一緒にサッカーしたり、宿題を手伝ってもらったり、親友であったり、好きな異性であったり、ときには喧嘩したり。自分が生きるには、そうした大切な人を抹消しないといけない。

 

バトル・ロワイヤル」には、まず、このあんまりにも残酷な状況に生徒たちが置かれるというのがある。

 

しかも、中学生だ。不良になったり荒れたりもする時期で、人生でもっとも感情的な時期ともいえる。もし自分が同じ状況に立たされたら、、と苦しく考えてしまう。

 

42通り分の苦悩

多くの映画では、1人かヒロイン含め2人の主要の登場人物がいる。ざっくり言ってしまうと「主人公がいて、ミッションがあって、最後に困難を乗り越える」というのが、多くの設定だと思う。

 

バトル・ロワイヤル」もこれは大きく変わらないのだけど、他の映画と違うのは、生徒42人分(正確には全員にスポットライトは当たらないけど)の選択、苦悩が描写されていること。

 

ある生徒は、崖から飛び降りて自殺してしまう。ある生徒は、「こんなのやめようよ!」とメガホンでみんなに語りかける。

 

ある生徒は、仲のいい友達と隠れて、「きっとこれ冗談だよ」と現実逃避する。ある生徒は、殺し合いを楽しむ。ある生徒は、好きだった女の子に告白をしにやっと探したら、その相手に銃で撃たれてしまう。

 

自分だったら、どんな選択をするんだろう。そう考えながら、それぞれの生徒の苦渋の選択をみせつけられるのは、重たい以上のなにものでもない。

 

ハンガー・ゲーム」とは全くの別物

同じような設定の映画に「ハンガー・ゲーム」がある。「アメリカ版バトル・ロワイヤル」と表現する人もいる。

 

でも、ぼくから言わせると、この2つは全く違う映画だ。「ハンガー・ゲーム」もいい映画だと思うのだけど、「バトル・ロワイヤル」とは設定のそもそもが違う。「同じ恋愛映画でしょ」と言われている気分になるくらいざっくばらんな分類だ。

 

 

2つの映画の設定の違いを比べてみると、

ハンガー・ゲームの設定

  1. 住人はゲームの存在を知っている
  2. 参加者は子供から大人まで
  3. 殺しあう相手は会ったことがない人
  4. 参加者は事前トレーニング、専属メンターまでつく

 

バトル・ロワイヤルの設定

  1. 生徒はゲームの存在を知らない
  2. 参加者は中学生
  3. 殺しあう相手は友達
  4. 生徒はただ監視され、生き抜くしかない

 

(1)「ハンガー・ゲーム」では、過去の反乱を理由に、12の地区から男女1名ずつ、くじで選ばれる。住民は、この事実に日々怯えつつも、ある意味で心の準備ができる状態。

一方で「バトル・ロワイヤル」では、生徒は楽しい修学旅行が一変、わけもわからずいきなり「殺しあってね」と言われる。

 

(2)「ハンガー・ゲーム」参加者の年齢層は子供から大人まで。大人は仲間をつくって「まずあいつを殺そう」とかって戦略が生まれる。

バトル・ロワイヤル」でも多少の戦略をたてる生徒はいるけど、どちらかというと、そこには感情ひとつでぶつかり合っている、生徒同士の生々しいぶつかりあいがある。

 

(3)「ハンガー・ゲーム」では、知っている人は同じ地区から選ばれたパートナーのみ。「バトル・ロワイヤル」では、相手は友達だ。後者のほうが、手を下す重みは大きい。

 

(4)「ハンガー・ゲーム」では、参加者は事前トレーニングを受けることができ、専属のメンターまでつく。ゲームの生まれたきっかけに反乱というものはあれど、いまでは富裕層の娯楽と化していて、ショービジネスみたいなものだ。

スタートの日には、レッドカーペットかと思うほど、派手な衣装を着た参加者が、観覧者の前に続々と登場する。

 

バトル・ロワイヤル」には、華やかな前座なんてないし、自衛隊に気に入ってもらえば空から食料とか薬を供給してもらえる、なんてことは起こらない。

毎日変わる危険地区のせいで、同じ場所にずっと隠れるなんてこともできない。そうもしないと、首輪が爆発する。無理にはずそうとしても、爆発する。

 

バイオレンスNGな人にはすすめないけど

「惹かれる」という言葉が適切なのかわからないけど、実をいうと、「バトル・ロワイヤルが1位」と言い出したのはここ2年くらいのことだ。最初にみたときは、みんなと同じように「やべーなにこれ。こわい」って感想だった。

 

でも、そこからなぜか「またみたい」と思うようになって、「なんで自分はこの映画に惹かれるんだろう?」と疑問を抱えながら、最近になって「そうか!」と気づいた。

 

けっこうバイオレントな映画だから、そういうジャンルがNGな人はみないほうがいいとは思う。けど、ここまで深い映画はないのかなと思ってる。比べられる映画が他にないから、これからもずっと1位のままだろうなぁ。

 

ちなみに、この映画をきっかけに栗山千明が発掘され、映画「キル・ビル」でハリウッドデビューをしたのは有名な話だけど、あのクエンティン・タランテイーノ監督の一番好きな映画も「バトル・ロワイヤル」らしい。

 


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