「ツレがうつになりまして。」をみた
※この記事はネタバレを含みません。登場人物の設定については少し触れてます。
「ツレがうつになりまして。」をみた。あったかい映画だ。そして、ある意味で日本の縮図だと思った。
「うつ」という病気について、理解が深まる映画だと思った。ぼくは、そういう傾向にある状態を一時期経験したことがあるんだけど、みてて「うん、そうそう」と共感の連続だった。
と同時に、旦那さん(ツレ)はいい奥さんをもって恵まれてるなぁとも思った。
まじめに5年間勤務したおかげで、多少の失業保険がおりて、しばらくは奥さんの収入に頼らなくても大丈夫だったし、その奥さんも「生活費やばい!」となったら、好きな漫画でがんばろう!とやってくれるサポートさ。
それが結果的に、コミックエッセイとなり、ヒットして、映画化した。運がいいともいえるし、お互いに"がんばらず"にできることを最大限にやったからこそ、生まれたストーリーだとも思った。
うつに苦しんでいる人は、日本にたくさーんいるんだと思うし、誰しもがこの映画みたいに、周囲のサポートを得られるとは限らないけど、とにかく心が温まる映画だ。
「うつ」という暗いテーマを、うまく明るい、前向きな雰囲気で包み込んでると思う。
「うつ」については、調べればいくらでも情報(ネットとか本とか)がでてくるけど、この映画をみて改めて思ったのは、うつは精神が弱い人がなるとかそういう問題ではなくて、状況次第で誰でもなる可能性がある病気だということ。そう、立派な病気だ。
うつってどういうものかというと、脳の神経伝達物質である「セロトニン」が不足してしまう状態。脳の病気ともいえるし、心の病気だ。
うつになって、それと戦っていくと、ときには気分がよかったり、「やっぱりだめだ」と気分がどーんと下がったりする。
通常は、この調整をセロトニンがしてくれるそうなんだけど、それが足りていないと、気分のアップダウンが激しくなる。振り子みたいに、「いい気分!」「やっぱダメだ。。」が繰り返す。
この「いい気分!」のときが禁物で、本人は「これで大丈夫!」と思い込んでしまうせいで、気分がまた下がったときの落ち込み具合が半端なくなり、「やっぱ自分はだめだ。。」と、最悪の場合、世の中から消えてしまおう、とか思ってしまう。
だから、「自分を責めない」「がんばらない」「長く付き合っていく」「無理しない」という意識をもって、ゆるやかに回復していくものであるということを理解しないといけない。
誰にでもなる病気といったのだけど、ぼくの好きなモデル・女優に、カラ・デラヴィーニュがいる。とにかく明るくて、ポジティブ人間の代表かと思ったくらいの人。
なんだけど、彼女がとあるインタビューで、うつに苦しんだ時期のことを語っていた。これを知って、改めて「だれでもなるんだ。性格は関係ないんだ」と思った。
Cara Delevingne interviewed by Rupert Everett
彼女は「自分が本当に求めるものを探す」ことが大事(だった)と言うのだけど、うつっぽくなると「自分の本当に求めること」を意識せざるおえなくなる面があると思う。
自分がやりたくないことをやろうとすると、おもしろいくらいに状態は悪化する。だから、うつになると「本当の自分」というものをある意味で見つけようとすることになるんだと思う。
ここが難しいところで、うつになる人の多くはまじめだ(自分も)。だから、どれだけこの意識をもっても「やらなくちゃ」「みんなに迷惑がかかる」と、がんばってしまう。がんばるのが、一番の禁物なのに。
だから、思っていることを全開に相談できる相手(家族なり友達なり医者なり)の存在が大切で、そういう意味で、ツレはその相手がそばに最初からいて幸運だなぁと思った。
その相手がいない人は、もっと苦しみ、回復しない人もいるのかもしれない。
かつ、「うつ」という状態は、世間的にどこかおおっぴらにできにくいところがあって、これも本人が抱え込む一因になったりする。
それで「自分はうつじゃない」と思うようになり、いくべき病院にもいかず、なかなか回復しないことも。「病院にいったら終わりだ」「薬に頼らざるおえなくなる」
まじめという性格は、決してわるいことではなく、むしろ素晴らしい性格なのに、それを否定するようになったりもする。うつ状態で、自分を否定するようになると、もう最悪だ。
あれだけ成功していたロビン・ウィリアムズが、なんで自殺してしまったのか。あれだけ人気のセレーナ・ゴメズでさえ、なぜ無期限休養を発表するくらいに、精神的に苦しんでしまうのか。
とかって思うと、うつの回復に、お金とか社会的な評判とかは無関係であり、むしろそれが悪化させることもあるということ。
自分が本当に求めるものはなんなのか、どんなことをしていれば、この先ハッピーに暮らしていけるのか。これをちゃんと見つめてこずに、「収入」「評判」「世間体」を優先して生きてきた人は、うつになりやすいのかもしれない。
そういえば、映画で「うつには、牛乳、バナナ、納豆、卵が効く」と言っていた。
いやぁ、もし人類のセロトニンをゼロにする生物兵器があったら、核爆弾よりよっぽど脅威なんだろうなー